all everything

何度も書き直す。

母親と仕事の話をよくする。あんな理由やこんな理由でフルタイムの仕事に参加するのが難しい人の話をきいた。「なにならできるんだろうね、まず自分を知らなきゃダメだね、その人は…」とおれの口からこぼれた。数年前にもしかしたらもっと前に、おれがおれに言ってあげたかった言葉だ。では自分はなぜ自分を知ってあげられなかったのだろう。

初めての勤労に相応しいとされる10代は内面の不安感(不安と名づけきるのにもまた不安が残るが、他者に説明するには不安としかいいようがない)で精神力が漏電してインターネットに必死に齧り付いている金のないオタクだった。世界に向けてドアを開け放っていなかったし、恥をかくくらいなら生涯年収が減ってでもいいから勤労年数を減らしたいと本気で思っていた。今考えれば10代のアルバイトなど失敗してもいいからなんだってやってみるべきだった。それすらも怖気付いて自営業の父親の元で細々と事務仕事の手伝いしかできなかったし、とにかく怒られた。

いや勤労に限って話をしているが自分を知る方法などなんでもあったはずだ。フィクション?ライトノベルは読んでいたがエンタメとして消費していた。部活?中学一年のときだけ務めた卓球部は同学年の同性部員らはずっと同じ人間とつるみ折り合いが悪かった。先輩は一つ歳が上なだけで怖かったしイキった3年生男子が新品のピンポン玉を脅すように踏みつけていたのをみて縮み上がった。学校?年齢が二桁になって以降はずっと誰かから何かを笑われていた。これだ。おれは学校という小さな社会で生きているだけでずっと笑われていた。なんなのかは今でもわからないが、俺はとにかく世間とラジオの周波数が合っていないようだ。どうせまた発達障害だ。笑われていた。笑われるのを我慢するたびおれの人格はねじれていった。児童とよばれる年齢なら怒りを爆発させて笑ってくる奴らの歯を折ってしまえばよかった。子供のしたことですから。全く同じ攻撃衝動を誰にもぶつけたことがないまま成人してやっぱり同じ攻撃衝動を持って仕事して抑肝散で散らしている。生きていて何度はらわたが煮えくりかえって体が熱くなり、怒りで脈が飛んでビクン!となったわからない。一度でも暴力につなげて仕舞えばよかったのだろうか。暴力はイカンのでだめですという鉄の掟がロボット三原則みたいに自分を食い止め続けた。結局人を殺めたことがないまま、多かれ少なかれおれのようなラジオの周波数がいまいちマッチしていない奴らが集まる職業と会社にたどりついた。わたしのチームには周波数もあっていないがそんなのにも気がつけないほど無敵の40代が数人いる。自分のことを棚に上げ、人の失敗を嘲笑い、段取りが最悪で、できるだけ手抜きで満額の日当をもらえれば良くて、会社がどれだけ儲かったかに興味は無くそのくせ楽ちんな仕事にありつくのだけは最速の40代たち。理詰めの尋問電話をすると謎のフィールを発揮して徒党を組んでスマホ越しにおれのことをクスクス笑っている。また笑われている。おれは自分が学ぶ立場だとか年上だからとかを捨て置いて無敵の40代たちをいつか半殺しにする日が来ると確信している。MMORPGのスキルツリー解禁のようなノリで武道をやろうか迷っていた時期があるけれどそんなの習わなくてよかった。ほんとうに殺してしまうから。おれとそこらじゅうで捕まる殺人犯との違いなんかなんんんにもないんだ。